| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-059 (Poster presentation)

負圧下の樹幹を水切りすることによるアーティファクト:コンパクトMRIを用いたブドウ木部の観察

*小笠真由美(東大院・新領域),内海泰弘(九大院・農),三木直子(岡大院・環境生命),福田健二(東大院・新領域)

負圧下にある木部の通水組織を水面下で切断(水切り)した試料は,負圧を緩和してから水切りした試料と比べて水分通導度の損失率が著しく高いことが昨年報告され,負圧下での試料採取による道管の空洞化(アーティファクト)の可能性が盛んに議論されている.本研究では,コンパクトMRIを用いて,負圧下にある木部を水切りした時の木部内でのアーティファクト発生の有無を検討し,水切りが木部内水分布に与える影響を解析した.

実験はヤマブドウおよびブドウのポット苗計5個体で行った.苗木への潅水を停止し乾燥ストレスを与えた後,樹幹の上部にカラーを巻いて水を満たし樹幹を水切りした.水切り前後で,水切り部位よりも基部側の樹幹をコンパクトMRIで撮像し,木部内水分布を比較した.また,木部ないし葉の水ポテンシャル,および撮像シュートの最大道管長を測定した.

4個体は木部を負圧下(約−1MPa)に制御して撮像した.MRI撮像部位から最大道管長より短い部位で水切りした3個体のうち2個体では,水切り後に木部の数カ所で道管内の水の消失が確認されたが,1個体では水切り前後で木部水分布は変化しなかった.MRI撮像部位から最大道管長より長い部位で水切りを行った1個体では,水切り前後で木部内水分布は変化しなかった.一方,木部の水ポテンシャルを−0.1 MPaに制御した個体でMRI撮像部位から最大道管長より短い部位で樹幹を水切りすると,水切り後に木部の一部で水が新たに検出された.以上より,負圧下にある木部を水切りすると道管の空洞化というアーティファクトが生じ,切断部からの距離がアーティファクトの発生に影響を与えることが示唆された.一方,負圧緩和後の水切りにより水の出現という別のアーティファクトが起こる可能性も示された.


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