| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-062 (Poster presentation)
窒素は植物の生育に不可欠とされている元素である。マングローブ植物が生育する沿岸域は潮汐によって有機物が流出するため、低窒素に陥りやすい。マングローブ植物は低窒素環境に適応した窒素獲得機構を有している可能性がある。
マングローブ土壌水中に含まれる窒素の大部分はアンモニア態であるが、植物の根近傍には硝酸態窒素が存在している。通気根を通じた酸素供給によって硝化反応が促進されているのかもしれない。根圏に存在する硝酸に対してマングローブ植物はどのような応答をしているのだろうか?
植物が硝酸態窒素を同化するためには、吸収した硝酸を還元する必要があるが、硝酸還元酵素を生成する能力は植物の種によって大きく異なる。マングローブ植物の一つ、オヒルギの硝酸を利用する能力、また硝酸濃度に対する応答を明らかにするため、5段階の硝酸濃度下(0, 1, 10, 100, 500 µmol L-1)で水耕栽培を行い、根と葉の硝酸還元酵素活性(Nitrate Reductase Activity: NRA)を計測した。
根と葉の双方からNRAが検出され、オヒルギが硝酸を還元できる事が明らかとなった。根のNRAは葉より約5倍高く、吸収された硝酸の多くは根で還元されていることが示唆された。また、NRAは供した硝酸濃度範囲内で飽和に達していた。得られた飽和曲線をミカエリス・メンテン式に当てはめると、根:Km = 0.4 µmol L-1, Vmax = 5.25 µmol gdw-1 h-1、葉:Km =0.02 µmol L-1, Vmax = 1.03 µmol gdw-1 h-1 となった。他の植物と比較すると、低い硝酸濃度で高い飽和値に達していたことから、オヒルギは低硝酸下でも効率的に硝酸還元を行える特性を有していると言える。