| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-069 (Poster presentation)
CO2は植物にとって光合成の基質であり、大気CO2濃度の上昇は植物の光合成の増加と生長の促進をもたらすと予想される。しかし、大気CO2濃度の上昇は植物によって異なる影響を与えることが知られている。我々は野生のシロイヌナズナの異なるジェノタイプの成長を比較した結果、高CO2に対して相対成長速度の応答性に差異があることを見出した。本研究では、ジェノタイプ間の高CO2への応答性に影響を与える遺伝子を見出すことを目的として、高CO2に対して相対成長速度の応答性の高い3系統と応答性の低い3系統の遺伝子発現を解析した。最初に、通常CO2濃度と高CO2濃度で生育させた植物の遺伝子発現をマイクロアレイにより網羅的に解析した。その結果、高CO2への応答性が高いジェノタイプに共通する発現変動を示した遺伝子は173個、応答性が低いジェノタイプに共通する発現変動を示した遺伝子は31個確認された。この中から我々は、植物の生長を制御する植物ホルモンであるオーキシン関連遺伝子、および、同化組織に必須な窒素の輸送体である硝酸トランスポーター(NRT)遺伝子に着目してqRT-PCRによる詳細な遺伝子発現解析を行った。オーキシン関連遺伝子の発現はマイクロアレイの結果の再現性が得られず、また、オーキシンのレポーター遺伝子の発現に対する生育CO2濃度の影響も認められなかった。一方、NRT遺伝子については高CO2への応答性の高いジェノタイプに共通して発現量の増大が見られた。また、これらの解析から、シロイヌナズナでは窒素同化関連の遺伝子発現調節が高CO2への応答性に重要であることが示唆された。