| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-076 (Poster presentation)
森林発達の初期における植生間競合は,植生構成個体の成長・生残,ひいては,その後の森林の発達過程に大きな影響を及ぼす。この競合で稚樹が示す樹形的反応は,その個体の物質生産能力に影響し,この競合の中での稚樹の更新成否を左右する。周囲植生の有無への稚樹の樹形的反応を明らかにすることは,遷移誘導に重要な植生間相互作用の制御に基礎的知見をもたらす。
本研究は,岩手県内陸北部のスギ・カラマツ若齢造林地において,両樹種植栽木の植栽2成長シーズン後の樹形を,下刈り実施区(年一度盛夏に下刈り実施)と省略区(植栽後一度も下刈り実施せず)の間で比較した。樹形的反応の解析のために,樹高に対する,幹基部直径,樹冠厚,樹冠幅,当年主軸伸長量のアロメトリー関係について,Standardised Major Axis回帰を行った。
基本傾向として,樹高増加に対し,幹形状比(樹高/幹基部直径の比)は,スギでは一定,カラマツでは低下した。樹冠形状比(樹冠厚/樹冠幅の比)は両樹種で増加したが,これは,スギでは樹冠幅増加の頭打ちのため,カラマツでは樹冠厚の尻上がりの増加のためだった。周囲植生の有無に対する反応は,両樹種で幹形状比にもっとも強く現れ,ともに下刈り省略区の方が幹が細長くなった。引き続く反応は,スギでは樹冠幅に現れ,下刈り省略区の方が樹冠幅が小さくなったが,カラマツでは幹形状比以外の反応は不明瞭だった。
下刈り処理への反応の明瞭さが樹形要素間で異なるという結果から,競争への樹形的反応は複数の樹形要素で同時に生じるのではなく,ある樹形要素から次の樹形要素へとカスケード的に生じることが推察される。