| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-078 (Poster presentation)
実生から成木に至るまで、樹木のサイズおよび生育環境は大きく変化するため、樹木は高い表現型可塑性を維持しながら進化してきたと考えられる。なかでも、光環境の変化に対する順化反応は、個体の光合成生産と生存にとって最も重要である。高木樹冠内の光環境は、樹高成長や葉量増加に伴って自己誘導され、多様な光環境に順化した形態・生理特をもった葉が存在する。「陽葉・陰葉」という名称が示唆するように、葉の特性は主に光環境によって規定されていると考えられてきた。一方、樹冠内では高さにともない、水分環境も大きく変化する。高木の葉の形態・生理特性を理解するためには、樹冠内における光および水分環境の変化に対する順化反応を合わせて評価する必要がある。本研究では照葉樹林に共存する常緑広葉樹4種(アラカシ・カクレミノ・コジイ・ヤマモモ)の成木(樹高約9~21m)を対象に、葉の形態や光合成能力が樹冠内の光環境や高さに対してどのように変化するのかを調査した。光環境に対する葉の重量:葉面積比 (LMA)の変化率は、アラカシ・コジイ・ヤマモモには種間差がなく、カクレミノはこれらよりも低い変化率を示した。一方、高さに対するLMAの変化率には種間差がなかった。照葉樹林の林冠層を構成する陰樹であるコジイとアラカシが最も広い範囲の光環境に対する順化能力を有していた。ヤマモモは比較的明るい範囲にのみ葉が分布する陽樹でありながら、光環境に対する葉の形態的順化反応は、陰樹のコジイ・アラカシと同程度であった。一方、陰樹の亜高木である、カクレミノの葉は暗い範囲にのみ分布し、可塑性も低かった。以上の結果から4種は光環境に対してニッチを分けることによって共存していると考えられる。