| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-080 (Poster presentation)

アメリカ乾燥地Tamarix ramosissima林における土壌の窒素循環

*今田省吾,舘野隆之輔(京大・フィールド研),谷口武士(鳥取大・乾燥地研),Acharya, K.(DRI),山中典和(鳥取大・乾燥地研)

アメリカ合衆国西部乾燥地の河川流域では、ユーラシア原産のTamarix属が侵入して林分を形成している。近年、Tamarix属の生物学的防除を目的にタマリスクビートル(Diorhabda属)が導入され、大規模な林分の早期落葉が引き起こされるようになった。一方で、この早期落葉による河畔林生態系の窒素動態の変化が懸念されるが、これに関してはほとんど調査されていない。

本調査はバージン川下流域のTamarix ramosissima林分で実施された。本調査林分では2011年(初夏)に初めてタマリスクビートルの食害による早期落葉が観察された。林内(川岸からの距離の異なる3地点)と林外に成立する塩生植物群落に調査区を設け、ビートルによる食害開始の1年後の2012年の夏と冬の2回、2年後の2013年の4月から9月の期間中1、2カ月間隔で、各調査区の表層土壌から土壌サンプルを採取した。採取したサンプルについて硝酸態およびアンモニア態窒素濃度、硝化速度および無機化速度の測定を行った。

ビートル食害開始の1年後よりも2年後に硝酸態窒素濃度が増加する傾向が認められた。各調査年の同時期(夏)に測定された硝酸態窒素濃度を比較すると1年目よりも2年目で有意に高い値が得られた。一方で、アンモニア態窒素濃度、硝化速度および無機化速度には調査年間での有意な変化は認められなかった。このように、ビートルによる食害開始直後には土壌の窒素循環への影響は認められないが、2年後には硝酸態窒素濃度の増加が引き起こされることが示唆された。


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