| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-081 (Poster presentation)
湿生植物は、通気組織を介した地下部への酸素供給(給気)によって、根圏の低酸素環境に適応する。低酸素環境下での根の呼吸は給気に依存しているため、根の呼吸で維持される様々な生理生態活性は利用可能な酸素量によって律速されていると考えられる。従って、根における酸素の利用可能性(アベイラビリティ)や根の呼吸特性(酸素消費特性)は、湿生植物にとって低酸素環境への適応戦略を左右する重要な要素となりうる。これまで、湿生植物の給気メカニズムに関する研究は数多く行われてきたが、根における酸素のアベイラビリティや消費特性に関する研究は少なく、その詳細は明らかにされていない。
本研究では、湿生植物の根における酸素のアベイラビリティと消費特性を明らかにするために、大型〜小型の湿生植物4種を用いて、酸素飽和条件と低酸素条件下での水耕栽培を行い、根内酸素濃度や根呼吸速度等について調べた。根内酸素濃度は根の通気組織内の酸素濃度を測定対象とし、根の基部から先端にかけて3cm間隔で記録した。根の呼吸速度の測定は、根の基部・中間部・先端部でそれぞれ行った。
酸素飽和条件下では、根内酸素濃度は根のいずれの部位においても200umol/L前後の高い値を示した。しかし低酸素条件下では、根内酸素濃度は根基部から先端部にかけて指数関数的な低下を示し、根基部で120umol/L、先端部で10umol/L程度となった。また、根の呼吸速度についても、低酸素条件下で大きく低下し、根先端部で最も低い値を示した。以上の傾向は全種に共通して認められた。これらのことから、低酸素環境に高度な適応を示す湿生植物であっても、根における酸素のavailabilityは呼吸による需要を大きく下回っており、酸素の戦略的利用が必要であることを示唆した。