| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-084 (Poster presentation)

不均一環境に対応した樹木個体呼吸の可塑性

森茂太(山形大農)

グローバルにみて系統、地域間で樹木個体呼吸に違いがあるかが重要な課題となっている。この問題に障害となっているが時間空間的な不均一環境である。この不均一環境に応じて根を含む樹木個体がどのようにバランスを保っているかを解決する必要がある。ここには非線形で表現される森林生態系のレジリアンスが隠されているとサイモンレビンらにより予測されている。こうした現象を定量化するためには、個体サイズ幅を広く、個体数を多く、正確に個体呼吸を評価することが不可欠であろう。

我々の研究ではシベリアから熱帯まで500個体以上の根を含む呼吸測定をおこなってきた。個体サイズは数ミリグラムの実生から直径1m、樹高30m、10トン以上の樹木個体を対象とした。また、測定に際して林縁やギャップなども含めて様々な条件下にある樹木個体を選択することで、不均一環境に対応した個体の器官間のバランス(同化部/非同化部、地上部/地下部)を呼吸から検討した。

個体呼吸(同一温度の瞬間値)を芽生えから巨木まで両対数軸上10の11乗倍の重量幅で見ると、地域、系統間差がほとんどなかった。つまり、意外なことにマクロスケールでは個体呼吸はサイズだけでほぼ決まっていた。これは、従来のミクロスケールの生理学では直接説明できない。これは、ミクロとマクロスケールで呼吸は異なった現象となるためである。こうしたスケール間の性質の違いを統合し、検討してミクロからマクロへのスケールアップアプローチに見通しをよくすることが今の我々の急務と言えるだろう。


日本生態学会