| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-086 (Poster presentation)

カンボジア二次林植栽樹木の浸透調整物質蓄積

*岩永史子(九州大・農), 宮沢良行(九州大・東ア研), 加治佐剛, 溝上展也(九州大・農), 矢原徹一(九州大・理)

気象条件の周期的変動が著しいカンボジアではその特異な環境に適応した樹木が生育している。特に中央部の氾濫原に成立した森林では雨季と乾季の移ろいに伴った長期的な乾燥と過湿が発生するため、樹木の水分利用に著しく影響していると予想される。ストレス環境に生育する植物の葉には多くの二次代謝物質が蓄積され、乾燥条件下の細胞の膨圧維持や活性酸素除去を通じて葉の生理活性維持、光合成活性・成長維持に寄与する。これら適合溶質と称される二次代謝物質には糖類、アミノ酸、無機イオンなど様々な物質が含まれ、その生理活性は濃度依存性があるとすでに示されている。一方で蓄積される物質の種類や量、時期やタイミングは種によって異なり、また物質の蓄積量とストレス耐性との関連性も種によって様々である。本調査ではカンボジア中央部の主要な造林樹種3種の適合溶質蓄積能の解析を通じて各樹種のストレス耐性を評価し、各樹種の成長特性との関連性について検討することを目的とした。調査はカンボジア中央部・コンポンチュナン州に設置されたコミュニティ林固定試験地にて、2012年9月から行った。調査地の環境計測は2007年から継続的に行われている。乾季には降雨量・土壌水分が低くなり、それに伴って日中の水ポテンシャルも低下した。しかし、夜明け前水ポテンシャルでは顕著な変動は認められず、葉内糖・ベタイン含有量においても明らかな増加が認められなかった。このことから、カンボジアのコミュニティ林に植栽された3樹種では乾季の降雨量・土壌水分低下にたいして樹体内の水ポテンシャルの維持がより重要であることが示唆された。


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