| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-145 (Poster presentation)

本郷次雄菌類コレクションから読み取る滋賀県南部の里山環境

佐久間大輔*(大阪自然史博), 今村彰生(北教大旭川), 橋屋誠(富山中央植物園)

本郷次雄(1923−2007)は、滋賀大学教育学部を拠点に大型菌類(いわゆる「きのこ」)について200種に及ぶ新種・新組合せとともに、多くの日本新産種を報告した菌類研究者である。その研究標本は大学(後に自宅)に設置したHONGO HERBARIUMに約7000点が保管されてきた。これらのうち、タイプ標本などは国立科学博物館に、また一部の研究材料が鳥取県の菌蕈研究所に移管されている。残る標本は2009年に関連資料とともに大阪市立自然史博物館に移管されている。菌類分類学上の重要性はいうまでもないが、同時に主に1950年台から1990年代に至るまでの大津市石山・瀬田地域の環境の記録としても興味深い。それは大多数の標本が本郷氏の自宅や滋賀大学の周辺で採取されていること、菌根性菌類であれば共生宿主の種組成を反映し、腐生菌も発生基質や環境の影響を反映するため、採取時に環境が記録されていることがある。本研究では採集年代ごとの発生環境を比較し、また腐生菌のヒトヨタケ属(広義)、菌根菌のテングタケ属など特定分類群について検討し解析した結果を限界や有用性とともに報告する。

一例を上げるとヒトヨタケ属は1960年代までは植物性堆肥あるいは動物の糞の上からたくさんの標本が採取されているが70年代以降、急速に少なくなる。テングタケ属では1950年代にはマツ林での採集標本が過半であったものが、1980年台にはナラーマツ林またはシイ林が大部分を占めている。


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