| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-148 (Poster presentation)
【背景】赤雪という、高山や極地の融雪期に雪面上が赤く染まる現象がある。赤雪現象は雪表面の光反射率を減少させ、雪氷の融解を促進すると考えられており生態学的に重要である。にもかかわらず、その分散様式は良く分かっていない。広範な地域で形態種Chlamydomonas nivalisが記述されることから赤雪藻類は広範な分布を持つ汎存種である事が示唆されるが、近年、隠蔽種による固有性が微生物で多く報告されている事から、赤雪藻類の分散制限も示唆される。本研究は全球規模で赤雪藻類の遺伝子情報を比較し、その分散様式について理解することを目的とする。
【手法】赤雪サンプル…アラスカ、グリーンランド、スバルバル、日本、パミール、南極。シングルセル単位で、18S rRNA - ITS2領域(c.a. 2,500bp)。
【結果・考察】627細胞中、61細胞で配列決定に成功。系統樹の結果、南極を除く全地域から成る汎存クレードがChloromonas属内に確認(99.9%相同性)→ITS解析を行った結果、全領域間で共有されるITSハプロタイプが存在→このOTUが汎存種である事が示された。また同様に、南極を除く北半球地域がChlamydomonas属内に99%相同性でクレードを形成→ITS解析の結果、共通ハプロタイプが存在しない事から遺伝子流動は比較的弱い事を示唆。南極を含む他のサンプルの多くは雪氷特異的なChloromonas cladeに散在し、種内レベルで固有性。しかし種間レベルで明確な地理パターンが無い→祖先種が南極を含む全球を分散していた事を示唆。
【結論】・北半球の赤雪を構成する緑藻群集は汎存種と固有種の両者から構成される。・前者は北半球で広範な分散・後者は分散制限を持つpaleoendemic種。・両半球の間に障壁が存在し、南極の赤雪藻類は独特の歴史を遂げている。