| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-151 (Poster presentation)

本郷次雄菌類標本の断片化したDNA増幅の試み

*今村彰生(北教大旭川),乾美浪,菊地淳一(奈良教育大学),佐久間大輔(大阪自然史博)

本邦における菌類分類学の泰斗である本郷次雄氏の没後, 自宅にて保管されていた菌類標本約6500点(Hongo herbarium)を大阪市立自然史博物館に移管した.この標本群には未同定のAmanita spp. , Boletus spp., Cortinarius spp., Galerina spp.などが多数含まれている.これらの未同定種または未記載種についても, 標本の形態的特徴が, 標本とともに寄贈された本郷氏直筆の観察ノートに詳細に記述されている. これら標本に立脚した分類学の進展や, 標本活用の促進ためには, DNAシーケンスデータの蓄積と形態情報との統合的理解が必要であると考えられる. これは, 今後新たに採取される標本との照合のためにも有用である。

これまでの研究において, これらの標本の薫蒸にパラホルムアルデヒドが用いられたためにDNA増幅が困難であることが判明し,その対策について検討してきた. その後,新たに発表された担子菌増幅を目的としたプライマーであるITS1-F_KYO2,ITS3_KYO2,ITS4_KYO2(Toju et al. 2012)などを導入し, 既存のプライマーとの組み合せの検討やPCR条件の検討などを行った.しかし, DNA増幅の結果は思わしくなかった.

そこで, 属ごとに特異的なプライマーを設計し, なおかつPCR条件などを複数検討することとした. その結果, Cortinarius属の一部において120 bp程度の塩基配列を解読することができた. これらの成果を報告するとともに, 同様の手法を他の属へ応用する可能性や, 得られた配列情報の有効利用について議論したい.


日本生態学会