| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-153 (Poster presentation)
貧栄養・低温といった厳しい環境である高山帯では、根系で共生する菌類が植物の生育を大きく規定していると推測される。その関係は環境条件よって大きく変わることも考えられる。多雪で特徴づけられる日本の高山帯では、雪の積もり方によって、生育期間、温度条件、水分条件、栄養条件など様々な環境条件が狭い範囲内で変化する。そこで本研究では、積雪環境の違いによって根内生息菌類が変化するのかを明らかにすることを目的に、幅広い積雪環境に生育するアオノツガザクラ(ツツジ科ツガザクラ属)の根内生息菌類についてメタゲノム解析を行った。北アルプス立山の室堂付近において雪解けの早い場所と遅い場所からそれぞれ5個体の細根を約20cm採取した。それらのうち半分は根内生息菌の培養に、もう半分はメタゲノム解析に用いた。この細根は洗浄及び表面殺菌後DNAを抽出し、PCRによってrDNA ITS1領域を増幅した。このPCR産物から第二世代シーケンサーGS Junior(ロシュ社)により40Mbpの配列情報を得た。塩基配列アセンブラー「Assams」を用いて、配列の97%類似度でクラスタリングしコンティグを得た。5リード未満の低出現頻度配列は除去し、得られたコンティグをOTU(Operational Taxonomic Unit)として進化的に同一の菌種とみなした。175のOTUが得られ、雪解け時期の違いでOUT数に有意差は検出されなかったが、主座標分析により、第一軸で雪解けの早い場所と遅い場所が大きく分けられ、両者の群集構造が異なることが示された。門レベル以上同定できた分類群を見ると、ビョウタケ目(Helotiales)に属するものが優占しており、これはツツジ科の根内生息菌の培養法による調査結果と一致する。また担子菌など培養法では出現しない種が検出された。