| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-158 (Poster presentation)
イチヤクソウは光合成による独立栄養性と菌根菌を利用する菌従属栄養性の特性を併せ持つ混合栄養植物であり,マツ科樹種の優占する針葉樹林,ブナ科樹種の優占する夏緑樹林,照葉樹林などに生息する.コナラやクヌギ,ツブラジイが優占する林分に生育するイチヤクソウの根系には,菌根菌の仲間であるベニタケ属菌が優占して定着すると示唆された.本研究は樹冠樹種がイチヤクソウの菌根菌群集に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,針葉樹のマツ属,広葉樹のシイ属,コナラ属の樹下に生育するイチヤクソウの根に定着する菌類のDNA解析を通して,菌根菌の群集構造を調べた.イチヤクソウは,アカマツ(マツ属)樹下で6個体,ツブラジイ(シイ属)樹下で11個体,アラカシ(コナラ属)樹下で3個体,ウラジロガシ(コナラ属)樹下で1個体採取した.各根系の異なる6部位から切り出した2 mm長の菌根断片をプールして,ゲノムDNAを抽出した.菌特異的プライマーを用いてITS-D1/D2領域をPCR増幅してから,クローニングをした.個体あたり64クローンをRFLPタイプ分けし,各タイプのシークエンス解析を行った.ITS領域で97 %以上の相同性をもつ配列は同一MOTU(分子操作的分類群)として扱った.これまでに,キメラ配列と解読を失敗したRFLPタイプを除去した1046クローンが33MOTUに分類された.ベニタケ属と最類似したのは14MOTUと最も多く,クローン数としても75.1 %(786クローン)で最優占した.そのため,イチヤクソウには属レベルで特定の分類群が関与することが示唆された.発表では得られたデータとともに,物理的な距離や樹冠樹種がイチヤクソウ根系に定着する菌根菌群集に与える影響について議論する.