| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-163 (Poster presentation)

地形効果を考慮した沿岸性藻場分布への津波の影響評価

*濵岡秀樹,堀正和(水研セ・瀬戸水研)

海草や海藻類によって形成される藻場は沿岸生態系における構成要素の一つであり、沿岸生態系内の生物多様性や生態系機能に重要な役割を果たしている。そのため、多くの研究者によってその分布パターンや現存量の時空間的変動の研究が行われている。

津波は藻場の分布パターンに影響を及ぼす要因のひとつであり、その規模の大きさから藻場を含む沿岸生態系に破壊的な攪乱をもたらすことが知られている。しかし、津波流況は局所的な地形条件によって大きく変化するため、その影響には大きな地域変異が見られる。そのため、藻場への津波の影響を定量的に評価するためには統一的手法による広範囲の調査が必要になるが、津波の影響範囲を考慮するとその評価は難しい。

本研究では、東日本大震災前後での海草・海藻藻場の空間変動および津波被害における地域変異の地理的要因を明らかとすることを目的に、震災前後での衛星写真および航空写真を地理情報システムおよびリモートセンシング技術を用いて解析した。

本研究の結果、津波による藻場現存量への影響は海草と海藻とで大きく異なることが明らかとなった。海藻藻場は三陸海岸を中心に藻場面積が減少していたが、広い範囲にわたって増加している地域もみられ、震災地域全体では22%ほどの減少であった。一方海草藻場では千葉県を除く多くの海域で大幅な減少が見られ、震災地域全体で約53%の海草藻場の消失が示された。このような植生間での津波の影響の違いはいくつかの重点海域での現場調査や報告とも一致しており、本研究の方法は大規模スケールにおける攪乱の影響を解析する手段として有効であると考えられる。また、津波による藻場面積の変動は海岸線の向きや内湾度に影響を受けており、特に湾奥部において強く影響を受けていることが示された。


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