| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-167 (Poster presentation)
チョウ類におけるこれまでの広域分布推定においては、気候要因や土地利用だけに着目することが多かった。しかし、チョウ類がその地域で個体群を維持するためには、幼虫の餌となる寄主植物の存在が不可欠であり、寄主植物が分布していなければ、例え気候や土地利用が成虫の生育に適していたとしても、集団を維持することはできないはずである。そこで本研究では、日本全国レベルで整備され公開されている分布データに基づいて、環境要因がチョウ類の分布に与える直接効果と寄主植物を介して分布に与える間接効果を考慮した分布推定をおこなった。
本研究では21種のチョウを対象に解析をおこなった。チョウの分布データとして、環境省による第4回・第5回自然環境保全基礎調査の動植物分布調査および種の多様性調査データを用いた。寄主植物の分布データとして、環境省による第6回・第7回自然環境保全基礎調査の植生調査データを利用した。
解析の手順としては、まず対象とするチョウの寄主植物の分布を気候、地形および土地利用で説明するモデルを寄主植物種ごとに構築し、推定した分布確率から、少なくとも1種の寄主植物が出現する確率を3次メッシュごとに計算した。続いて、チョウの分布を、先に求めた寄主植物の出現確率と気候および土地利用で説明するモデルを構築した。ここで構築したモデルにおいて、寄主植物の分布を含めなかったモデルに比べて当てはまりがよくなるのかどうかをAICに基づき評価した。
その結果、18種において寄主植物を考慮したモデルの方が、当てはまりがよくなった。チョウ類の広域分布推定には、寄主植物の分布を考慮することが望ましいことが示唆された。