| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-172 (Poster presentation)
熱帯林の減少・劣化を緩和することは、生物多様性保全や炭素排出抑制に寄与する。そのため、REDD+などの森林減少緩和メカニズムの構築が進んでいる。こうしたメカニズムが対象地域における森林減少の駆動因を除去・低減する方向にうまく機能すれば、森林減少の緩和効果が期待できる。しかし、森林減少の駆動因は複雑で多岐にわたり、国や地域、時間経過とともに変動するためよく分かっていない。そこで、1960-80年代および2000年代の東南アジア8ヶ国とタイ国76県を例に、森林面積に影響を及ぼすと考えられる7つの要因(人口、社会経済発展、木材生産、農林産物貿易、農地拡大、農業生産性、地理)を用いて、森林減少の駆動因解析を行った。
1960-80年代、8ヶ国の森林率は、バイオマス・生産性が高くアクセスし易い“熱帯低地林”の潜在面積が広く、人口密度の高い国ほど低かった。そして、森林率が既に低い、貿易が活発な高開発国でさらに森林減少が進んだ。同じくタイ76県の森林率も、“低湿地林”の潜在面積が広い県(チャオプラヤ川周辺県など)ほど低かった。そして、森林率が既に低い低標高域の県でさらに森林減少が進んだ。2000年代になると、こうした傾向は一変した。8ヶ国では、森林率が低く、人口が多く、農林産物輸入の多い(自国における森林減少圧を緩和できる)国ほど森林が回復した。同じくタイ76県でも、森林率が低く、人口が多い県で森林が回復した。アブラヤシ・ゴム園増加による悪影響が、8ヶ国・タイ76県ともにみられた。このように森林減少の駆動因は、非常に多岐にわたる一方、定性的には国レベルと県レベルで似ており、また数10年前と現在では対称的であることが分かった。