| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-174 (Poster presentation)

浅海域立体画像撮影システムの開発とサンゴ観測への適用について

*小熊宏之,山野博哉(国環研),篠野雅彦,今里元信(海技研),河端智樹,渋谷研一,江藤稚佳子(朝日航洋)

近年、サンゴの白化や死滅、藻場の衰退など浅海域の生態系の変化が観察されており、同域の反復観測の必要性が高まっている。従来、浅海底の詳細観測は人的調査が主であり、広域を対象とした調査には限界が存在した。また、水中ではGPSが利用できないため観測対象の精確な測位が困難であり、反復調査の妨げとなっていた。よって、サンゴ礁や藻場など浅海域の生態系においては、海底地形やサンゴ・海藻の三次元形状と現存量の把握や、生息位置と経年変化に関する情報が乏しい。以上から、①群体の判別を可能とする高解像度画像の撮影、②ステレオ解析による海底地形や生物の三次元情報と現存量の把握、③生物の生息位置を特定するための地理座標の付与、④撮影画像を接合することによる詳細かつ三次元的な浅海底の広域画像の作成、を目指し水深5~10m程度の浅海域を対象とした観測システムの開発に至った。

本システムは、小型ボートの左右に装着された水中ハイビジョンカメラにより浅海底のステレオ撮影を行い、対象の三次元モデル(DSM)を作成する。加えて、GPSによる測位とジャイロによる姿勢情報を収録し、DSMに撮影画像を投影した三次元画像を作成し、GPS及びジャイロの情報に基づき、三次元化した画像に緯度・経度を付与する。本システムによる撮影画像は全画素に地理座標を持つことから精確な反復調査が容易になる。また、高さ情報も同時に得られることから海底地形やサンゴ・海藻等の三次元形状と現存量の経年変化の抽出も可能とした。更に、カメラ1台のみで同様のステレオ観測を可能とし、小型漁船等に装着するための簡略システムも開発した。今後、地球温暖化で注目されるサンゴ礁の白化現象や再生状況のモニタリング、藻場をはじめとした浅海域の漁場評価、河川・湖沼の水底調査等への活用が期待される。


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