| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-176 (Poster presentation)
近年、農林業の従事者の高齢化や減少を原因とする里山の荒廃により、野生動物の生態系が大きく変化している。生物多様性保全の観点より、人間と野生動物の適正な共生関係の確立が望まれる。それには、野生動物の生態系が周りの環境や様々な人為的なものを含めた外的要因によってどのような影響を受けるかを予測する必要がある。そのツールとして、我々は、生態系への道路の影響を従来の方法よりも正確に取り入れた生息地適性シミュレーターを開発した。このプログラムは、C++で書かれていて、Windows PC上で動作する。このシミュレーターはGISに準拠しており、まず、道路に関する情報を地図データから自動的に読み取り、それを基に道路端から一定距離だけ離れた領域の図形的な情報を求め別の地図データとして保存する。これは、生態系が道路の影響を受けるようになる領域を表すものである。この地図データ、及びこれと同じ領域の植生分布に関する電子データを我々が作成したプログラムを用いて合体することにより、生息に適した食料があり、かつ道路の影響を受けにくい、野生動物が生息可能な領域を表示する地図データが得られる。そこで、このシミュレーターにより、国土地理院による道路の地図データと環境省による植生分布のデータを使って、神奈川県厚木市の郊外における野生の哺乳類の生息適性領域を求めた。その結果を環境省による生息データと比較するとある程度の一致が見られることが分かり、このシミュレーションの有効性が明らかになった。今後は、これを発展させ個々の道路の交通量の予測値や道路の幅などの影響を取り入れたより正確な生息地適性シミュレーターを作る予定である。尚、神奈川県厚木市周辺の植生分布は、環境省第3、6回自然環境保全基礎調査植生調査の成果を使用し、哺乳類の生息データは、環境省第3、6回自然環境保全基礎調査哺乳類調査の成果を使用した。