| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-178 (Poster presentation)

関東・中部地方の半自然草原におけるextinction debtの支払いプロセス

*大津千晶(山梨県森林研), 星野義延(東京農工大・農), 飯島勇人(山梨県森林研)

近年、半自然草原における現在の植物の種数が現在よりも過去の環境条件でより良く説明される例が多く報告されている。これはハビタットの変化に対して種の反応が遅れるためであり、これらの種には将来絶滅する種が含まれているという仮説が提唱されている。このような種の数はExtinction debt(以下、ED)と呼ばれ、仮説の妥当性が世界中で研究されている。

しかし、これまでのEDの検証研究では、経年的な草原生種の生残および加入の動態、併行して起きている刈取りなどの撹乱や、草食獣の草原利用の増加、気候変動などの環境変化の影響は考慮されていない。そこで本研究ではED仮説の検証を目的とし、関東・中部地方に残存する半自然草原において、1980年代に植生が調査された地点で追跡調査を行い、以下の3点を検討した。①半自然草原における植物種の消失・加入は過去の草原面積の影響を受けるか?②草原の管理はEDの発生を抑制するか?③植物種の動態にはEDだけでなく他の環境条件も影響するか?

階層ベイズモデルによる推定の結果、過去30年間管理が放棄された草原では、1980年代に観察された草原生種126種中121種が1910年代の草原面積が大きい箇所ほど2000年代にも観察される確率が有意に高くなり、全ての説明変数の中で最も有意となる種数が多かった。2000年代に新たに観察された草原生種については、1910年代の草原面積の係数が有意となる草原生種は27種であった。モデルの説明変数のうち、草原面積を1910年代から調査開始時点である1980年代に変更すると、草原面積の係数が有意となる種数は少なくなった。一方、過去30年間管理が継続されてきた草原では、過去の草原面積はほとんど草原生種の消失・加入を説明できていなかった。


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