| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-180 (Poster presentation)
新潟県におけるイノシシ(Sus scrofa )による水稲被害額は2009年に4392万円を記録したが、2012年には946万円まで減少した。この被害額の減少は、2009年ごろから県内で電気柵が設置され始めた影響が大きいと考えられている。新潟県のイノシシ被害の中心である上越市で、電気柵の設置地点図を作成したところ、地域によって一張りの電気柵の長さと電気柵設置後の被害の発生状況に違いがあることがわかった。そこで本研究は、電気柵の設置パターンが異なる上越市の2地域について、電気柵の設置方法がイノシシの水稲被害にどのような影響を与えているか検証を行った。
調査地は、電気柵の設置様式の異なる上越市の名立区・旧上越市地域(NJ)と柿崎区(KA)を設定した。データ分析に際して、被害地点のデータは獣害損害評価耕地状況を、地図情報は国土数値情報とLANDSATから作成した土地被覆図を使用した。
まず、被害発生地点における広葉樹林・針葉樹林・河川・草地・積雪など計9つの地理的要因をGISアプリケーション(ESRI社製ArcGIS 9.3)を用いて抽出し、二項分布を仮定した一般化線形モデルを作成し、両地域間で被害発生地点の地理的要因に地域差があるかについて検討したところ、両地域間に地域差はみられなかった。次に、両地域間で一張りの電気柵の平均距離についてはKAがNJより有意に長かった。 また、電気柵の設置前後で被害地点数の変化を検討したところ、KAは18.4%、NJは237.6%になった。これらの結果を踏まえ、 両地域間の電気柵設置パターンの差がイノシシの被害に与えた影響について考察する 。