| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-183 (Poster presentation)
水田生態系に成立する植物群落の種多様性評価を適切に評価するため、景観構造を空間スケールに応じて階層的に評価できるAdditive Partitioning (Wanger et al., 2000) の評価手法を試みた。茨城県南の3地域において谷津田の景観要素を田面、畦畔、法面(袖部刈りとり草地)に3分類し、各地域で構成要素ごとに10圃場を選定した。1筆の水田や1筆の畦畔、連続する斜面刈取り草地からなる各調査地点に1m2の調査枠を5つ設置し、植生調査を行った。さらに、地権者から管理状況のヒアリング調査を実施した。
空間スケールに応じた各構成要素の種多様性を解析した結果、全出現種における景観要素の種数は田面<畦畔<法面の順で大きくなった。刈取り草地の種多様性の涵養効果が高いことが示された。また、全出現種における空間階層別寄与率を解析した結果、田面は比較的局所的な空間スケールが影響していた。一方、斜面刈取り草地については圃場間多様性の寄与率が最も高く、広域レベルの空間スケールが影響を及ぼしていた。広域の空間スケールが寄与している原因として管理方法の違いに着目し、管理頻度と草地の種多様性の関係を解析した結果、刈取り頻度にバラツキがあり、草地の種多様性に大きな影響を与えていた。年間の刈取り頻度が3回を超えると種多様性は徐々に低下していくことが示された。水田生態系に成立する植物群落の種多様性には景観構造と管理形態の双方が影響を及ぼしていることが明らかになった。