| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-184 (Poster presentation)
京都府京丹後市における未利用広葉樹資源量の把握
○石橋早苗(京府大)・長島啓子・田中和博(京府大院)
京丹後市は人工林率が低く小面積の人工林が散在しているため、人工林とそれに隣接する広葉樹林を抱き合わせた施業を目指し、未利用の広葉樹をチップとして利用する事業を進めている。そこで本研究では、京丹後市においてどのような場所にどのような植生があるか調べ、立地環境をもとに未利用の広葉樹林の資源量を把握し、同市の森林ゾーニングに寄与することを目的とする。
地理情報システムを用いて、京都府京丹後市における地質図と地形図をオーバーレイした「立地環境図」をもとに、面積の大きい立地環境を抽出し、合計37プロットで現地調査(毎木調査)を行った。各プロットの胸高断面積割合を用いたクラスター分析の結果、京丹後市の植生は5つの植生群に分類され、CCAを行うと立地環境と植生には関係が無いことが分かった。また、各プロットの資源量と多様度を用いて有意差検定を行い、過去の植生によって資源量が異なること、また丹後町は多様度および植被率が高く、種多様性の高い貴重な植生が残っていることが示唆された。
京丹後市全域の資源量を把握するには、過去から現在の植生変化をもとに算出するのが適切であるが、最新の植生図が無い為、立地環境別の植生の変化が京丹後市全域に適用できるという仮定の下、京丹後市における利用可能な広葉樹資源量を算出した。その結果、資源量は259,142m3となり、事業の一年あたりの目標値の23年分だった。長期的に広葉樹林を利用していくためには20年周期での施業が望ましいが、その際にはシカの食害への対策も必須である。また、多様度および植被率が高かった丹後町での施業は、貴重な植生の保存のために避けるべきだと言える。今後の課題として、より正確で詳細な資源量の把握のためには最新の植生図が必要である。