| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-185 (Poster presentation)
湖沼堆積物に含まれる花粉は,過去の植生の指標として用いられているが,その花粉組成がどの範囲の植生を反映しているのか,という点がしばしば問われる。Sugita(1994)は,花粉と植生量のあいだの相関がそれ以上よくならない距離を「有効花粉飛来範囲」とよび,理論的・経験的にもとめられるこの距離を花粉組成が反映する周辺植生の空間スケールとみなせると提案している。本研究では,北海道の4湖沼を対象として,湖底表層堆積物中の花粉組成と周辺植生との比較をおこない,各湖沼の有効花粉飛来範囲について検討した。
阿寒湖(1320ha),渡島大沼(小沼と合わせ910ha),ニセコ大沼(9ha),羅臼湖(43ha)の堆積物表層から花粉を抽出し,同定・計数した。また,環境省の自然環境GISデータを利用して,各湖沼の堆積物採取地点を中心に,半径を100m〜2kmずつ広げながら半径10kmの範囲まで周辺植生の組成を計算した。花粉組成とそれぞれの範囲の周辺植生の組成をBray-Curtisの非類似度を用いて比較した。
その結果,阿寒湖と渡島大沼では半径4〜5km,面積の小さいニセコ大沼ではやや狭い半径3kmの範囲が有効花粉飛来範囲に相当すると考えられた。一方,羅臼湖の有効花粉飛来範囲は半径10km以上であると推定された。北欧や北米での既往研究では,湖の面積が小さいほど有効花粉飛来範囲も小さくなるとされ,面積20〜30haの湖の有効花粉飛来範囲は数百mから1700mであるという結果が得られている。花粉生産の機会が少ないササ草原の面積をどのように評価するかなど,今後の検討が必要である。