| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-187 (Poster presentation)

優占種の種・群集レベルでの影響は遷移系列に沿って変化する

*江川知花(北大・地球環境)・露崎史朗(北大・地球環境)

多年生草本群集において、優占種は、競争により他種の成長を抑制し、群集構造を強く規定すると考えられている。遷移においては、時間とともに群集構成種の被度の均等度が増す。このことは、優占種と他種の種間関係が時間的に変化する可能性を示している。優占種と他種との種間関係が競争的でない場合、優占種は群集構造の規定要因とはならないかもしれない。この仮説を検証するため、本研究では、均等度の異なる遷移初期から極相までの群集間で優占種の種レベル・群集レベルの影響比較を行った。

北海道サロベツ湿原泥炭採掘跡地内の遷移初期・後期群集および未採掘地の群集(極相)において、1m2の方形区を20個ずつ設置し、優占種の除去処理区、無処理区を設けた。各処理区で総植被率・各出現種の被度・多様度(Shannon’s H')・均等度(E)を2年間記録した。

均等度の低い遷移初期の群集では、優占種の除去処理によって他種の被度が減少した。一方、遷移後期の群集では、除去処理により他種の被度が増加し、除去から2年目には、除去によって減少していた総植被率が除去前と同レベルまで回復した。均等度の最も高い極相群集では、いずれの種の被度も除去処理によって変化しなかった。遷移後期の群集では、除去処理によって均等度が無処理区と比べて有意に低下したが、遷移初期、極相群集では、除去による群集構造の変化は認められなかった。

以上より、優占種の他種に対する影響は、遷移初期では促進的だが後期になると競争的に転じ、極相になるとほぼ消失することが示された。優占種除去は、遷移後期においてのみ均等度を低下させたことから、優占種は、常に群集構造を規定するわけではなく、他種に対して競争的影響を持つ場合のみ群集動態に影響している可能性が示唆された。


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