| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-189 (Poster presentation)
近年、高緯度北極域では氷河の急速な後退が起こり、新たな地表面が露出して一次遷移の場となっている。有機物分解の担い手である土壌微生物は物質循環や土壌生成に重要な役割を果たしており、遷移に伴う微生物群集の量的・質的変化は生態系機能に大きな影響を及ぼすと考えられる。本研究では、クロノシーケンス(氷河後退後の経過時間が異なる複数の地点)間の比較と、モニタリング(ある地点を経時的に観察する方法)の両方を用いて、高緯度北極の氷河後退域における土壌微生物群集の短期的・長期的な変化を調べた。
2003年にスヴァールヴァル諸島ニーオルスンの氷河後退域において、氷河末端からの距離が異なる4つのサイト(G 03 , 1, 2, 3)を選定し、各サイトでの優占植生タイプを1-2タイプ設定した。2013年には、この4サイトに加え、その時点の氷河末端付近に新たなサイト(G 13 )を設けた。両年において各サイト・植生タイプで鉱質土壌を採取し、凍結乾燥後に日本に持ち帰った。微生物バイオマスおよび群集構造はリン脂質脂肪酸分析により解析した。
2003年時点の氷河末端付近(サイトG 03 )ではその後10年間でバイオマスの増加が認められたが、その他のサイトでは大きな増加は見られなかったことから、遷移のごく初期では微生物群集の変化が非常に早いことが示唆された。また、いずれの年においてもクロノシーケンスに沿ったバイオマスの増加や群集構造の変化が認められたが、同じサイト内でも植生タイプによってバイオマスや群集構造は異なっており、土壌微生物群集の成立・発達には植生の影響が非常に大きいことが示された。