| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-193 (Poster presentation)

針葉樹人工林における群状伐採1年後に出現した樹木の種特性と分布

*山瀬敬太郎,藤堂千景,伊東康人(兵庫農技総セ)

群状伐採は,針葉樹人工林から広葉樹林へと誘導する際の一手法である。群状伐採では保残木が隣接するため,伐採地内は保残木との位置関係によって生育環境(特に光環境)の傾度が生じる(Yorkら2003)。環境傾度は伐採地内に出現する植物種の分布や成長に影響を与え,その影響は植物の種特性によって異なることが予想される。そこで,出現する植物種のうち,将来的に林冠を構成する樹木種の分布および成長の特性を明らかにすることは,伐採後の優占樹種を予測し,あるいは維持管理の必要性を判断するのに重要な基礎資料になると考えられる。

調査地は兵庫県新温泉町に位置し,周辺にコナラ群落が分布するヒノキ林である(海抜379~399m,平均樹高13m)。群状伐採地4箇所(伐採地の一辺サイズは,樹高の1.5倍)内に10m2当たり1箇所の調査地点(1m☓1m,計154地点)を設定し,各地点の全天写真撮影による空隙率と土壌の体積含水率,出現した植物種名と最大高さ(樹高),被度パーセントを測定した。また植物種ごとに積算優占度(SDR2)を算出し,生活形別(高木,低木,藤本,多年草,一年草),および高木と低木については生育環境別(草原,林縁,夏緑樹林,照葉樹林)にSDR2の合計値を求めた。

コナラ群落の林冠を構成する夏緑高木種は18種が出現した。高木種の分布は,各地点の生育環境との間に明らかな関係はみられず,不均一に出現した。各夏緑高木種の最大樹高は,空隙率の低い地点で小さく,空隙率の高い地点でも,他種のSDR2の合計値が大きくなるために,夏緑高木の樹高は小さくなった。夏緑高木の樹高が大きくなる可能性が高いのは,空隙率30-50%前後の中間的な光環境の地点であった。


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