| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-194 (Poster presentation)

常緑広葉樹林と針葉樹人工林の境界域における埋土種子組成

*酒井敦(森林総研・四国),土居優(高知大・理),三宅尚(高知大・理)

森林の埋土種子組成はシードソースからの距離や地形など様々な要因が関与している。本研究では針葉樹人工林の埋土種子組成の空間分布を調べ、その成立要因をシードソースからの距離と地形を中心に検討した。

調査は高知県四万十町にある市ノ又渓谷風景林とそれに隣接するヒノキ人工林で行った。市ノ又風景林はモミ、アカガシ、ウラジロガシ、サカキ、シイ等から構成される。広葉樹林から人工林にかけて長さ200mのトランセクト(広葉樹林側50m、人工林側150m)を設置した。トランセクトは森林の境界と直角方向に、人工林側の谷と尾根を横断するように設置した。2013年4月にトランセクト上に10mごとに2か所埋土種子調査用の土壌サンプル(20cm×20cm×深さ5cm)を採取した。土壌はプランターに入れて温室に置き、発芽試験法により埋土種子数を推定した。また、地上植生の分布を把握するため、トランセクトに沿って人工林に侵入した広葉樹(DBH>5cm)の毎木調査と林床植生調査を行った。

推定された埋土種子数は、天然林側(N=10)で1,253個/㎡、人工林側(N=30)で587個/㎡だった。サンプル当たりの平均種数は天然林側で10.8種、人工林側で9.1種だった。埋土種子数はヒサカキが最も多く、カギカズラ、ハシカグサ、コガクウツギ、ヒメコウゾ、イイギリと続いた。天然林からの距離による埋土種子の種数や種子数に一定の傾向は見られなかったが、谷地形で種数、種子数が多くなる傾向が見られた。鳥被食散布種子はトランセクト全体に分布する傾向にあったが、風散布、重力散布は分布が片寄っていた。人工林の急な壁谷斜面にはアカメガシワ、イイギリ、カナクギノキ等が侵入しており、母樹の周辺に埋土種子が多い傾向が見られた。林床植生の種数や植被率は地形との相関が強かったが、埋土種子分布との相関は小さかった。


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