| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-199 (Poster presentation)
富士山北斜面の標高約2400 mより上のスコリア荒原では現在も一次遷移の初期段階にあり、植物は基質不安定性や強風、乾燥などの厳しい環境にさらされている。初期遷移に関する以前の研究は、先駆植物のミネヤナギが高木種のカラマツに対し環境改善効果を持ち、裸地上よりミネヤナギパッチ内の方がカラマツ実生の密度と生残率、成長速度が高いことを示した(Endo et al. 2000)。しかし、そこでの生残率や成長速度は個体の密度・齢構成とサイズ構成からの推測であった。そこで本研究では、ミネヤナギパッチがカラマツの加入・生残と成長に与える効果を実測によって検証するため、永久調査区において、ミネヤナギパッチの内外に生育する実生・稚樹の成長と生残・加入について15年間に2回の再調査を行った。標識された個体の生残と新規加入を調査し、全個体の基部直径(D0)、樹高、樹冠サイズを測定した。
カラマツの生残と成長におけるミネヤナギパッチ内外の差は、カラマツのサイズに依存することがわかった。D0<4.0 mmでは、パッチ内個体はパッチ外より生残率が高く、肥大成長が低かった。その際、樹高と樹幹サイズの成長に差は無かった。一方D0≧4.0 mmでは、生残率に差は無く、肥大成長のみパッチ内で有意に高かった。以上よりミネヤナギパッチは、パッチ樹冠下にある小サイズ個体に対し、生残に正の効果を持ち成長には負の効果を持つか効果が無いことが示された。また、カラマツがミネヤナギパッチの上へと伸びると、被陰から解放されるため成長が促進されるが、一方で強風や厳しい温度条件などにさらされるため、パッチ内外で生残率に差が無くなったと考えられる。