| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-201 (Poster presentation)
開拓以降広く北海道で行われてきた択伐施業は、天然林の組成や構造に大きな影響を与えた主要因のひとつである。しかし、施業が行われた林分の長期的な変化を直接的に示す例は多くなく、多くの森林・林業関係者が指摘する「天然林の劣化」の実態を裏づける資料は乏しい。そこで、本研究では、北海道大学天塩研究林における択伐施業下での森林の組成・構造の長期的な変化を記述した。
過去のデータは、同研究林の「伐採案計画標準地調書」(1950)から得た。1950年4月、同研究林内に、長さ1000m、幅10mのライン上の標準地が複数設けられ、胸高直径10cm以上のすべての立木の毎木調査が行われた。生データは失われているが、樹種別(主要樹種以外は一括集計)・胸高直径2cm階ごとの集計表から、林分の種組成や構造を知ることができた。これらの箇所では、その後数回にわたって択伐が行われた。これらのうち2箇所で、2013年4-5月に毎木調査の再測を行なった。調査範囲は「調書」に付された5000分の1図をもとに復元した。正確な位置の再現はできていないが、尾根や沢などの位置関係から、およその比較は可能と判断した。
森林の変化は明らかであった。立木の本数はわずかに増加したものの、立木の蓄積はおおむね半減したと見積もられた。とくに針葉樹の減少が著しく、新規加入も大きく制限されていた。全体の本数の微増は広葉樹の新規加入によっており、広葉樹の蓄積はほぼ維持されていた。このように、全体的な蓄積の減少と、針葉樹から広葉樹への移行傾向が明らかであった。このことは、20年程度の時間スケールで行われた、より詳細な林分動態の観察結果とも一致する。過去の伐採量の記録と照合しながら、変化をもたらした要因について考察した。