| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-016 (Poster presentation)

ショウジョウバエ寄生蜂の寄主依存的な翅形態可塑性

*天野早織(岡大・農), 高橋一男(岡大・環境生命)

表現型可塑性とは,外部環境条件に応じて自身の表現型を変化させる性質を指し,広範な生物種の環境適応において重要な役割を果たしていると考えられている.寄主の体内で成虫前の発育を完了する内部寄生蜂にとっては,寄主の体内環境は外部環境と考えられるため,寄主の免疫特性,発育特性,体サイズといった形質の違いによって,可塑的な表現型変異を示す可能性がある.しかし,寄主生物の体内環境変異によって表現型可塑性が誘導されるのか,またどのような要因が可塑性のパターンを決定するのかについては未解明である.本研究では,8種のショウジョウバエを寄主,2種の内部寄生蜂(Asobara japonicaLeptopilina japonica)を寄生者として用い,寄主間の系統的距離,体サイズの違い,発育期間の違いといった形質の差が,内部寄生蜂の表現型可塑性に与える影響を評価した.表現型の指標としては,定量化が容易で機能的な形質である翅の形態とサイズを用いた.翅形態に関しては,前翅の輪郭形状を楕円フーリエ記述子を用いて定量化し,主成分分析によって形態情報を3つの主成分に縮約した.その結果,いずれの寄生蜂においても,寄生成功率,寄主の系統的距離・体サイズの違い,発育期間の違いが複合的に表現型可塑性のパターンに影響している可能性が示唆された.多くの場合,寄主の系統的距離が表現型可塑性に影響することが確認できたが,それに加えて寄主の体サイズや発育期間が影響していることも明らかとなった.


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