| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-017 (Poster presentation)

ハワイフトモモの葉形質多型における遺伝的基盤をRNA-seqにより解明する

*伊津野彩子 (京大院・農), 上野真義 (森林総研), 永野惇 (京大・生態研セ, JST・さきがけ), 小野田雄介, 辻井悠希, 北山兼弘 (京大院・農), 本庄三恵, 工藤洋 (京大・生態研セ), 井鷺裕司 (京大院・農)

ハワイフトモモ (フトモモ科) は、ハワイ諸島に優占する固有樹種である。各島内の多様な環境に適応し、海岸から高山帯、先駆相から極相までの森林を構成し、樹高や葉の形態形質 (葉面積、厚さ、トリコーム量など) に大きな変異が見られる。乾燥の強い高標高地では、小型でトリコームの多い葉をもつ個体 (有毛型) が多く見られる一方で、降水量の多い低標高地では、大型で薄くトリコームの少ない葉をもつ個体 (無毛型) が高頻度に生育する。標高の異なる集団間では遺伝子流動が認められているが、共通圃場では葉形質変異が維持されており、本種の葉形質多型には遺伝的基盤があると推察される。しかし、現存集団の形質多型をゲノムレベルで詳細に解明した例はない。そこで本研究では、本種における、異なる環境への適応に関わる候補遺伝子を特定し、その候補遺伝子の時空間的変動パターンを中立遺伝子と比較して明らかにすることを目的とした。

ハワイ島マウナロア山の150m、700m、2400mの各標高サイトにおいて、有毛型および無毛型を1個体ずつ、合計6個体を選定し、mRNA抽出用の葉または葉芽サンプルを採集した。抽出したmRNAは、次世代シーケンサーを用いて塩基配列解読を行った。全サンプルの配列からde novoアセンブリにより得られたコンティグをリファレンス配列とし、シロイヌナズナの情報をもとにして機能的注釈付けを行った。各サンプルの配列中でSNPを含むコドンサイトにおいて、自然選択の有無を検証した。発表ではこれらの解析結果を踏まえ、候補適応遺伝子の集団間分化パターンを中心に考察する予定である。


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