| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-018 (Poster presentation)

持たざる者もここまでできる!~シロアリ単為生殖の起源~

*野崎友成(京大・農・昆虫生態),矢代敏久(京大院・農・昆虫生態),松浦健二(京大院・農・昆虫生態)

有性生殖を行う幅広い分類群において単為生殖が二次的に進化している。しかし、単為生殖能力を有している種の占める割合は分類群によって大きく異なり、その進化のしやすさには、産卵に至るまでの雌の行動や胚発生の開始刺激など複数の要因が関与していると考えられる。ヤマトシロアリ属では単為生殖を行う種が複数知られ、単為生殖が進化しやすい分類群の一つである。先行研究においてヤマトシロアリ属における単為生殖能力の進化に2雌によるコロニー創設と処女産卵という行動が前適応として機能したことが示唆された。しかし、未受精卵の胚発生の進行具合についてはこれまで注目されてこなかった。そこで、本研究ではヤマトシロアリ属の中で単為生殖能力をもたないアマミシロアリの未受精卵の胚発生について調べた。雌個体のみによる創設から3カ月後に採取した未受精卵の染色観察を行ったところ、分裂組織が観察された。また、未受精卵のマイクロサテライト解析により、未受精卵の遺伝子型はほとんどがホモ型であり少数がヘテロ型であった。ヘテロ型の未受精卵が存在することから核相が回復していることが示され、ヘテロ接合度の急激な減少から核相回復の様式は単為生殖能力を有するヤマトシロアリと同様に末端融合型のオートミクシスであると推定された。また、稀にではあるが孵化にまで至る偶発的単為生殖も観察された。これらの結果により、本種の未受精卵は核相を回復し細胞分裂を行っていることが明らかになった。ヤマトシロアリ属で単為生殖能力が独立に何度も進化した背景には、行動としての前適応条件だけでなく、未受精卵の単為発生開始という胚発生における性質も関わっていたことが示唆された。


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