| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-019 (Poster presentation)
環境変化に応じて同一の遺伝子型でありながら表現型を変化させる生物の性質を表現型可塑性という。このような表現型可塑性が種間相互作用や個体群動態に重要な影響を与えると近年議論されてきた。被食者が可塑的に防衛形質の有無を変化させることは、被食者―捕食の相互作用に影響し被食者―捕食者の個体群動態を大きく左右する。そのため、可塑的に誘導された防衛の個体群動態への効果を知ることは、被食者―捕食者系の個体群動態をより正確に理解することにつながる。
淡水に住む藻類の一種であるイカダモは、捕食者であるミジンコやワムシの出すシグナル物質(カイロモン)に反応して、可塑的に群体(細胞が整然とイカダ状に連なった状態)を形成することが知られている。群体を形成しサイズを大きくすることによって捕食者から食われ難くなるため、イカダモは捕食者に対して誘導防衛を行っていると言える。
このようなイカダモの誘導防衛はよく知られているが、本研究では、群体形成のみならず、細胞集塊(細胞がランダムに組み合わさった状態で、群体よりも大きい形態)も形成するイカダモ株があることを報告する。このイカダモ株は、単一形質の可塑性による防衛を行うのではなく、複数の誘導防衛形質を持つことを意味する。現在、このような複数の誘導防衛形質を持つことの生態的意義を考察するため、被食者―捕食者系(イカダモ―ワムシ)において群体形成と細胞集塊の発現動態を同時に観測する実験を進めている。本発表ではその実験の途中経過について紹介する。