| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-020 (Poster presentation)
カリブ海の大アンティル諸島に生息するアノールトカゲは、樹木の構造的特徴をもとに利用する部位を分割することで同じニッチ内に複数種が同所的に生息している。さらに、キューバでは構造的特徴のみならず、森林の浅深度合いによって生じた気温差という新たな環境軸を利用する種も存在している。Anolis sagreiは開放的な高日射量域に生息し、約33˚Cという高い体温を維持している。一方、A. allogusは林床へ届く直射日光が少ない閑静で冷涼な森林深部に生息し、維持している体温は約30˚Cと低い。A. homolechisは林縁部、または木漏れ日のあふれる林間を利用しており、約32˚Cという中間的な体温を維持している。すなわち、これら3種は温度選好性を分化させることで、樹木の同じ部位を利用するにも関わらず同所的生息を可能にしているのかもしれない。本研究は、生物の至適温度との関連が示唆されているTRPイオンチャネル受容体に注目し、温度選好性の分化機構を解明することを目的とした。まず、3種の複数のTRP配列をそれぞれ比較したところ、TRPA1において活性化温度を変化させうる領域でアミノ酸置換が生じていることが見出された。そこで、Patch-Clamp法を用いて3種のTRPA1の活性化温度の測定を行なった。本講演では、3種のTRPイオンチャネル受容体の活性化温度の観点から温度による棲分けのメカニズムについて議論する。