| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-021 (Poster presentation)

渓流棲昆虫トゲマダラカゲロウ属の体色斑変異と河床地質の関係

*田村繁明,加賀谷隆(東大院・農学生命)

トゲマダラカゲロウ属幼虫は,河川上中流域で普通にみられ,底生動物群集に占めるバイオマスは大きい.幼虫は石面付着物と他の底生動物を摂食する雑食者で,魚類や鳥類の重要な餌である.トゲマダラカゲロウ属幼虫の体背面の色斑には個体変異がある.本属のオオマダラカゲロウ幼虫では,白色部が多い個体の優占度は淡色で明るい花崗岩河床の河川で大きく,暗色部が多い個体の優占度は濃色で暗い堆積岩河床で大きい傾向が明らかにされている.この体色斑と生息環境の色特性の対応は,本属幼虫の体色斑が捕食者や餌動物に対して隠蔽色として機能していることを示唆する.しかし,花崗岩や堆積岩以外の色特性の異なる様々な河床地質と本種の体色斑変異の関係や,本属他種の幼虫の体色斑変異パターンは不明である.本研究は,本属のオオマダラカゲロウ,ミツトゲマダラカゲロウ,フタマタマダラカゲロウの幼虫について,体色斑型を分類し,様々な河床地質の河川における個体群の体色斑型構成と生息地の河床地質の関係を明らかにすることを目的とする.様々な河床地質の河川が比較的近距離に位置する富良野,日光,奥多摩・丹沢,瀬戸の4地域の河川20地点から老齢幼虫を採集した.生きたまま撮影した個体の写真から体背面の29または35部位のRGB値を測定し,その値に基づいたクラスター分析により各種の体色斑型を分類した.各調査地点の河床の色特性を評価するために,水中写真から河床の平均明度を算出した.トゲマダラカゲロウ属3種の体色斑はそれぞれ4~5型に分類され,いずれも幼虫の体色斑と生息地の河床地質に連続的な対応関係があり,明るい河床の個体群ほど明色の体色斑型個体の比率が大きかった.個体群間の体色斑型構成の相違は,河床の砂や砂利の明度と明瞭な対応を示した.したがって,3種の体色斑は,捕食者や餌動物に対する隠蔽機能を有することが強く示唆される.


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