| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-051 (Poster presentation)

タイリクモモンガは子に費やすコストを季節的に変化させるのか?

*嶌本樹(岩手連大・農), 鈴木圭(岩手連大・農),古川竜司(帯畜大・野生動物),柳川久(岩手連大・農)

哺乳類において繁殖と餌資源には強い関係性があり,餌資源が豊富になると,産子数が増えることや,仔の成長率や生存率が高くなることが知られている.植食性哺乳類の中で季節繁殖動物でありながら年複数回繁殖する種は,餌資源のフェノロジーによって,繁殖する季節ごとに利用できる資源が異なり,仔に費やせるコストが季節的に変化するかもしれない.そこで,本研究では年2回繁殖し,餌資源を樹木に依存するタイリクモモンガPteromys volansにおいて,餌資源が繁殖のコスト投資に影響を与えるかを検討するために以下のような実験を行った.春に妊娠していたメスを1個体,夏に妊娠していたメスを2個体捕獲し,それぞれをケージに入れて,室温で飼育した.もし餌資源が繁殖のコスト投資に影響を与えているのであれば,豊富に餌を与えることで仔に費やすコストは両時期で,あるいは季節に関わらず同じになると考え,餌は毎日十分量を与えた.親が仔に費やすコストを調べるために,親にとって最も負担が大きく,仔の成長率が母乳に依存する泌乳期の親と仔の体重の増減を季節間で比較した.親と仔の体重の計測は,分娩した日を0日とし,仔が離乳するまで約1週間に1度行った.春に繁殖した親の体重はあまり減少せず,体重が一定に保たれていたが,仔の成長率は低かったため,仔に費やすコストは低いと考えられた.一方,夏に繁殖した親の体重は徐々に減少していったが,仔の成長率は高かったため,仔に費やすコストは高いと考えられた.これらの結果から,餌を十分与えても季節間によって仔に費やすコストに差が生じた.これは,タイリクモモンガの繁殖における仔へのコスト投資は餌資源以外の要因によって影響を受けている可能性があることを示す.


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