| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-053 (Poster presentation)

シギゾウムシ類が産卵に利用する堅果の大きさと産卵数の関係

*阿部 志保,森 貴久(帝京科学大)

コナラシギゾウムシやクヌギシギゾウムシなどのシギゾウムシ類の成虫は、ブナ科の堅果の内部に産卵することが知られている。堅果の大きさは幼虫の成長に影響し、幼虫の成長量は適応度に影響すると考えられるので、成虫は産卵をする際に大きさにより堅果を選択している可能性がある。本研究では直径・長さを大きさの基準とし、シギゾウムシ類の成虫が産卵する堅果を選択するときの堅果の大きさの影響と、産卵の際に堅果の大きさにより産卵数を変化させているのかを明らかにすることを目的とした。

野外でクヌギの堅果を無造作に収集し、直径・長さを測定した後にケースの中に保管し、幼虫が脱出するまで観察した。脱出後、1つの堅果から脱出した幼虫の匹数、幼虫1匹あたりの重さを測定した。

幼虫が入っていたクヌギ堅果の大きさは、入っていないものに比べ有意に大きかった。1つの堅果から脱出してきた幼虫の数と堅果の大きさの関係については、4匹以上幼虫が脱出してきた堅果は幼虫が1匹のみ脱出してきた堅果と2匹以上脱出してきた堅果に比べ、有意に大きかった。同様に1匹あたりの幼虫の重さについては、1つの堅果から1匹のみ脱出してきた幼虫の重さは、2匹・3匹・4匹以上の場合の幼虫の重さと比べ有意に重かったが、2匹の場合・3匹の場合・4匹以上の場合ではそれぞれの間に差はなかった。以上の結果からシギゾウムシ類の成虫は堅果に産卵する際に、堅果を直径・長さのより大きなものを選択して産卵していること、また、産卵する堅果を選択する際には、堅果の大きさと幼虫の必要とする資源量に応じて、産卵数を1個、2‐3個、4個以上と調整していることが示唆された。


日本生態学会