| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-054 (Poster presentation)

ナミアメンボに出現する短翅型雌と長翅型雌の卵生産と産卵パターン

*髙橋 玄(筑波大・生物),渡辺 守(筑波大・生物)

ナミアメンボの雌に生じる短翅型と長翅型について、日齢による蔵卵数と日当たり産下卵数の変化から繁殖戦略の違いを検討した。室内飼育により羽化させた両型の雌を個別に飼育し、解剖して保有卵数を数えたところ、羽化直後の雌では、両型ともほとんど卵をもっていなかった。卵巣内の未熟卵の数は日齢と共に増加し、5日齢には50卵を数え上限になったと考えられた。一方、亜成熟卵の生産は、短翅型の雌では1日齢から、長翅型の雌では3日齢を過ぎてから開始されている。上限の30卵まで蓄積されるのに、短翅型では5日と、長翅型の9日より早かった。その結果、短翅型の雌は1日齢ですでに少数の成熟卵が認められ、その数は日齢と共に増加して、13日齢では70卵程度を蓄積することになった。これに対して、長翅型は5日齢になってから成熟卵が観察され始め、13日齢になっても25卵程度しか蓄積していなかった。性成熟の指標として、求愛を受けた時に交尾を受容した日齢を調べたところ、両型とも11日齢前後であった。産卵は、短翅型で13日齢から、長翅型で15日齢から開始したが、この日齢の違いに有意差は得られなかった。短翅型の最初のクラッチサイズは41卵で、長翅型の18卵より有意に多かった。クラッチの産下間隔は3日程度で、産下回数の増加と共に両型のクラッチサイズは減少し、有意差は消失していった。交尾後の雌は20日以上かけて産卵を続けたので、交尾後の5日間ごとに産下卵数をまとめたところ、交尾直後の5日間で両型とも2クラッチを産下し、合計産下卵数は短翅型で60個、長翅型で30個と有意に異なった。しかし、その後の産卵では産下頻度もクラッチサイズでも翅型間に有意差は得られていない。したがって、短翅型は未熟卵を早くから成熟させて、交尾時までには多くの成熟卵を蓄積し、直ちに産卵できる形質をもっていることが分かった。


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