| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-056 (Poster presentation)
クラッチサイズ(一腹卵数)は繁殖成功度や個体群成長率を決める重要なパラメーターであり、古くから生活史研究の中心的話題となっている。そのなかでも高緯度になるほどクラッチサイズが大きくなる現象は鳥類をはじめ様々な動物で知られているが、いまだにそのメカニズムははっきりしていない。これまでに捕食圧や日長時間などの仮説が提唱されているが、特に支持を集めているのは資源量の季節性に着目した仮説である。高緯度になるほど資源量の季節性が大きくなり、冬季の個体数がより制限される。その結果、翌年繁殖に参加する個体に多くの資源が与えられ、育てられる子の数が多くなるというのがこの仮説である。大陸の東西など同緯度でも気温の年較差の異なる地域では資源量の季節性も異なることが考えられる。このような同緯度地域間でクラッチサイズを比較することで、季節性の影響を、日長時間をコントロールして検討することができる。ユーラシア大陸の東西に広い分布域をもつシジュウカラはこのような比較に最適であるが、これまでは西ヨーロッパ内での比較(緯度・経度・高度)研究しかなかった。近年東アジアでも本種の研究が増えてきたため、本研究では東アジアでも緯度クラインがあるかどうか、また西ヨーロッパと比べてクラッチサイズが異なるかどうかを調べた。
沖縄から中国東北部まで11地域おける個体群のクラッチサイズを比較した結果、東アジアの個体群でも明瞭な緯度勾配が認められた。勾配の傾きは西ヨーロッパの個体群と同程度であったが、クラッチサイズは21%大きいことがわかった。本研究では大陸の東西で広域な緯度勾配を比較することにより、日長時間よりも資源量の季節性がクラッチサイズに強く影響していることを示すことができた。