| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-059 (Poster presentation)
高緯度の種/集団では、各個体は一年の中で好適な短い期間に集中して繁殖することが知られる。こうした繁殖可能個体の季節的集中度に見られる緯度勾配パターンが、もしオスとメスとで異なっているならば、集団中の実効性比は緯度に沿って変化する。演者らは、高緯度ほど繁殖可能な雌雄が短期間に同調して出現するため、実効性比の偏りが小さくなり、ゆえに性淘汰圧が弱まると考えている。反対に、低緯度では繁殖可能メスの重複出現が確率論的に少なくなる上に、繁殖可能オスは年間を通じて出現するため、実効性比の偏りが助長されて性淘汰圧は強まると予想される。本研究では、低緯度(沖縄)と高緯度(青森)のメダカ野生集団間で、年間を通じた繁殖可能個体の出現割合を追跡・比較することで、この仮説を検証した。沖縄では、繁殖可能なメスの出現は3月から10月まで続いたのに対し、オスは一年を通じて多くが繁殖可能な状態にあり、メスが繁殖してない時期でも繁殖可能個体が見られた。対照的に、青森では、繁殖可能なメスの出現は5月から7月に限られており、繁殖可能なオスの出現もこの時期に集中していた。結果として、沖縄より青森の集団の方が、繁殖期間における実効性比の偏りが小さい傾向にあった。演者らのこれまでの研究から、沖縄より青森の集団の方がオスの二次性徴が隠微で性的二型の度合いが小さいこと、青森のオスは闘争にも求愛にも消極的であること、そして青森のメスはオスに対する選好性が弱いことがわかっている。これらの事実はいずれも、青森集団の方が性淘汰圧が弱いことを強く支持する。