| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-063 (Poster presentation)
マルチプルパタニティとは一腹の子の父親が複数いることである。全出産数に対するマルチプルパタニティの割合には種間差があることが知られているが、その変異に関わる要因についての分析は、まだ十分に行われていない。アカネズミ属(genus Apodemus)は旧大陸に分布する野ネズミであり、種によってマルチプルパタニティの割合の変異が大きい(30%〜80%)ため、マルチプルパタニティの割合の種間差とその要因の検討に適した分類群であると考えられる。そこで、本研究では、北海道から九州まで広く分布している日本固有種のヒメネズミ(Apodemus argenteus)およびアカネズミ(A. speciosus)のマルチプルパタニティの割合を明らかにし、アカネズミ属におけるマルチプルパタニティの種間差の要因を検討することを目的とした。北海道雨竜郡幌加内町および北海道帯広市において、捕獲調査を行った。妊娠メスは出産まで飼育し、母子のDNAからマルチプルパタニティの判定を行った。その結果、ヒメネズミでは妊娠メスの27.8%(5/18)がマルチプルパタニティであり、アカネズミの78.3%(18/23)と比較して有意に低く、アカネズミ属の中で最も低い値だった。また、過去のアカネズミ属の研究データとあわせ、マルチプルパタニティの割合に影響を及ぼす要因を検討した結果、相対的精巣サイズが大きく、オスの体重が重い種ではマルチプルパタニティの割合が高い傾向が示された。これは、精巣サイズが大きく、一匹のオスが多くのメスと交尾可能な種、また、オスの体サイズが大きく移動性の高い種では、一匹のメスが交尾するオスの数が多くなり、マルチプルパタニティの割合も高くなるためだと考えられる。