| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-066 (Poster presentation)
両生類では変態の時期とその大きさが重要な意味を持ち、幼生の成長や発育は様々な環境要因の影響を受ける。しかし、冬の訪れなどの季節的な環境の変化を手がかりとして一般的な日長の変化に反応するものはほとんどなく、一時的な水域で幼生期を過ごすものなど多くの種で個体群密度、捕食者の存在といった比較的短時間の生息環境の変化が成長や発育に影響する。カスミサンショウウオは成長と発育が光周期に影響を受けることから急激な生育環境の変化にはあまり影響を受けない可能性が考えられた。そこで本研究では、カスミサンショウウオの変態時期とその大きさに与える個体群密度(短期的な環境要因)と光周期(長期的な環境要因)の影響について調べた。
岡山県真庭市でカスミサンショウウオの卵塊を4月に採集し、孵化した幼生を一定条件下で飼育した。個体群密度の効果を調べる実験では、直径9.5㎝の飼育容器を用い、A:2頭で飼育、B:容器を半分に仕切って2頭で飼育、C:1頭だけで飼育の3条件を設定した。光周期の影響を調べる実験では、15~20℃の16L-8Dおよび12L-12Dで幼生を飼育した。外鰓が消失した時点で頭幅と体重を測定し、実験条件間で比較した。
個体群密度の実験では、体重の平均値が2頭で飼育した場合に有意に重くなったが、変態までの日数と頭幅の平均値は条件間で有意な差は検出されなかった。光周期の実験では、どの温度条件においても長日条件では幼生期間が長くなり、それに伴って体重と頭幅も大きくなった。これは、夏では時間をかけて大きくなり、冬が近づくと発育を早めて小さくても変態するという適応であると考えられた。これらの結果より、カスミサンショウウオは長期的な環境変化により強く反応して成長することで、季節的に生活史を組み立てていると考えられる。