| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-067 (Poster presentation)
オオオサムシ亜属では体サイズ分化による同所的な共存がしばしばみられるが、体サイズ分化が十分でない種間では側所的な分布がみられ、その原因は主に繁殖干渉による相互排除であると考えられている。しかし、体サイズ分化だけではオオオサムシ亜属の分布パターンを全て説明することは不可能である。京都市北白川周辺に生息するオオオサムシ亜属は、大きく分けて平地側と山側に分布域がわかれている。平地側には中型種のヤコンオサムシが、山側には大型種のオオオサムシ、中型種のマヤサンオサムシ、小型種のヤマトオサムシが生息している。過去の研究でヤコンオサムシとオオオサムシ、もしくはマヤサンオサムシとの間には交尾行動がみられ、繁殖干渉によって分布境界ができていることが示唆されている。一方でヤコンオサムシとヤマトオサムシとの間では繁殖干渉の効果が弱く、ヤマトオサムシが平地側に分布していない理由づけとしては十分といえなかった。そこで、ヤマトオサムシが最も小型であることから、表面積に対する体の大きさの割合が小さく、その為環境の変化に対して最も敏感であるとの仮説をたて、成虫の高温・乾燥時の脱水耐性と光を照射したときの表面温度上昇速度を、中型種のヤコンオサムシ、マヤサンオサムシと比較した。その結果、小型種であるヤマトオサムシの脱水速度が、高温・低湿条件下でより大きくなることがわかり、平地でのパフォーマンスの低下の原因となる可能性が強く示唆された。このことから、オオオサムシ亜属ではサイズ差が小さい種間では繁殖干渉が、サイズ差が大きい種間では環境への応答の差が分布の境界を作るうえで重要な役割を持っている可能性が高いことがわかった。