| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-070 (Poster presentation)
晩成性鳥類の雛の生存と成長は、成熟するまでの間の親鳥の育雛行動、とくに給餌行動に大きく左右される。針葉樹人工林では、一般に、カラ類の繁殖期の主要な餌となる鱗翅目幼虫が、広葉樹林と比較して少ない。演者らはこれまで、小面積の広葉樹林(広葉樹パッチ)が残存するスギ人工林内に巣箱を設置し、カラ類の一種であるヤマガラPoecile variusの繁殖行動を調査してきたが、その結果、巣と広葉樹パッチの位置関係が給餌行動に影響を及ぼしていることがわかってきた。そこで今回は、巣~広葉樹パッチ間距離の異なるつがい間で雌雄それぞれの育雛行動を詳細に調査し、餌環境に応じたヤマガラの適応的な繁殖様式について検証を試みた。
調査は、愛知県豊田市にある名古屋大学稲武フィールドの約55年生のスギ人工林で行った。本調査地には、林内や周縁の尾根、沢沿いの一部に、広葉樹パッチが点在している。2012年、2013年に約60個の巣箱を、林内に約20 m間隔で列状に設置した。5月から6月上旬にかけて孵化したつがいのうち、少なくとも一方の親が色足環で識別可能であったつがいを対象とした。孵化日を0日齢として、雛が11~13日齢時に、巣箱の出入口をデジタルビデオカメラで6時~16時の約10時間、連続して撮影した。映像より、つがいごとに、雌雄それぞれの給餌回数、滞巣時間、餌動物の種類や、大きさを記録した。
その結果、いずれのつがいにおいても、いずれか一方の親の給餌回数が全給餌回数の60~80%を占めており、滞巣時間は、雄は最長で0.5~1分程度であったが、雌は2~10分程度と長く、撮影時間中の合計滞巣時間も、雌は雄よりも著しく長かった。本報告では、これらの結果と巣周辺の各採餌場所特性に関する結果にもとづき、餌環境の違いに応じたヤマガラの育雛行動について考察する。