| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-072 (Poster presentation)
福島第一原発事故により低線量被曝を受けたアズマヒキガエルを対象とし、①胚から幼体における発生・成長過程への放射線影響の評価、②体内放射性Cs濃度の減少速度の算出とその決定要因の抽出を行った。発生・成長過程の研究では、2013年4~5月に福島県川俣町と二本松市(空間線量1.00~1.31 µSv/h)の池沼で卵塊を採取した。対照として東京都府中市でも2013年3月に卵塊を採取した。採取卵塊は10個ずつに切り分け4-5ヶ月間18℃の恒温器内で飼育し、胚ではステージ・ナンバーを毎日、幼生では頭胴長を3日に1回、幼体では頭胴長を6日に1回記録することで成長率を評価した。3地点において胚発生と幼生の成長率に差は見られなかった。ただし、幼体の成長率には2倍程度の違いがあり、これは幼体期に与えた餌量が3地点で一様ではなかったことが要因と考えられた。これらの結果から、受精時の低線量被曝がその後の発生と成長に及ぼす影響は小さいと考えられた。体内放射性Cs濃度に関する研究では、2013年7月に福島県二本松市で7個体を捕獲し、個体毎に飼育し、放射能汚染されていない餌を与えた。約170日間、2週間に1回の頻度で、生きたままGe半導体検出器を用いて体内の放射性Cs濃度を測定した。各個体の137Cs濃度は0.2~5.8 Bq・kg-1・day-1の速度で減少していった。この減少速度について、初期濃度、体サイズ、餌量、排糞頻度、筋肉量を説明変数としてSpearmanの順位相関係数で評価したところ、減少速度は初期濃度が高いほど有意に速いことが判明した。また、筋肉量が多いほど遅くなる傾向があった。今後は、上記の説明変数に加え、飼育環境の気温、糞と脱皮殻の量および放射性Cs濃度なども含めた解析を行うとともに、アズマヒキガエルにおける放射性Csの生物学的半減期を推定する。