| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-075 (Poster presentation)
生活史イベントの季節性をフェノロジーという。これまで、捕食者種と被食者種のふ化フェノロジーのずれが捕食-被食関係に強く影響することが、複数の研究で示唆されてきたが、そのメカニズムはよく分かっていない。サイズ依存の捕食-被食系では、捕食者は早くふ化するほど、ふ化直後に出会う被食者が相対的に小さく食いやすいので、捕食-被食関係が強いと考えられている。しかし、これだけでは、ふ化フェノロジーの強いインパクトを説明するには不十分である。なぜなら、被食者は成長や形態変化により時間とともに大型化するため、捕食者に有利なサイズ関係が長期にわたって維持されるとは限らないからだ。ふ化直後だけでなく発生期間全体にわたって両者のサイズ関係と捕食圧の動態を調べることが、背景にあるメカニズムを理解するうえで有効になるだろう。私たちは、①捕食者のふ化が早いほど、初期のサイズ関係が捕食者に有利になるため捕食が起こりやすく、そのような場合には、②捕食者の成長が加速し、捕食者有利なサイズ関係が継続することで、強い捕食-被食関係が長期にわたって維持される、という仮説を立てた。私たちは、ふ化直後の体サイズが似通っているエゾサンショウウオ幼生(捕食者)とエゾアカガエル幼生(被食者)を対象とした操作実験により、一連の仮説を実証した。さらに実験では、サンショウウオのふ化が早く、捕食-被食関係が強まると、カエル幼生の変態が遅れ、大きなサイズで変態することがわかった。以上の結果から、餌の栄養価が高く、捕食成功が捕食者の成長を強く促進するような系において、ふ化フェノロジーが捕食-被食関係の帰結を左右し、被食者の個体数と生活史に大きな効果を持つと考えた。