| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA2-084 (Poster presentation)

東北地方太平洋沖地震がフジツボ個体群における幼生加入量と底生個体群サイズ、及びその関係性に与えた影響

*阪口勝行, 岩崎藍子, 佐原良祐, 大平昌史, 金森由妃, 萩野友聡(北大・環境), 深谷肇一(統数研), 相澤章仁(横国大・院・環境情報), 辻野昌広((公財)日本生態系協会), 奥田武弘(水研セ・国際水研), 野田隆史(北大・地球環境)

浮遊幼生の加入は岩礁潮間帯の固着動物の個体群動態のカギを握る過程である。メタ個体群スケールでは加入量は成体の個体群サイズに依存しており、一方、小スケールでは加入量は幼生の輸送過程に依存している。また局所個体群は開放系であり、その動態はしばしば加入量の変動に依存する。

この様な特徴をもつ固着動物の個体群は、広域での沈降と津波を伴った東北地方太平洋沖地震により大きな影響を被ったと考えられる。その影響を評価する為、三陸沿岸のイワフジツボを対象に、個体群サイズと幼生加入量を2004年~2007年及び地震後の2012年~2013年に定点調査した。得られた地震前後のデータの比較により、(1)幼生の加入パターンの変化(2)メタ個体群スケールでの個体群サイズの改変を介した加入量の変化(3)局所個体群成長率の決定要因としての幼生加入の重要性の変化について検討した。

岩礁単位での幼生の加入パターンには地震前と比べて顕著な変化は見られなかった。一方、湾単位及び三湾全域での加入量は地震後(特に2012年)に増加し、その変化は底生個体群サイズの増大に伴って生じていたことが明らかになった。また局所個体群成長率は、地震前には加入量に依存していなかったのに対し、地震後には依存するように変化していた。

地震に伴う沈降後に本種の帯状分布が一時的に拡大したことから、このような個体群動態の変化は本来の生息潮位以深に移動させられた底生個体の生存・繁殖と、本来の生息潮位における裸地の増加とそれに対応した幼生加入によって生じたものであると考えられる。


日本生態学会