| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-087 (Poster presentation)
近縁な外来種の侵入により在来種が減少、絶滅する例が近年多く報告されている。魚類においても、カワマスとブルトラウトの例や (Leary et al., 1993 )、タイリクバラタナゴとニッポンバラタナゴの例 (長田, 1980; 河村, 2003) など国内外を問わず報告されている。ため池に生息するシナイモツゴとモツゴにおいても、絶滅危惧種であるシナイモツゴ (環境省, 2007) の生息地にモツゴが侵入すると短期間でモツゴへ置き換わることが深刻な問題となっている 。
小西・高田 (2005) は、この置き換わりの原因として、2種間の交雑や雑種の不稔などを挙げている。しかし、侵入初期の個体数がシナイモツゴより圧倒的に少ないと考えられるモツゴが短期間でシナイモツゴの個体数を圧倒する理由を十分に説明できるとはいえない。個体数の増減には産卵数などの繁殖形質が大きく影響するため (田中, 2004)、2種の繁殖形質に違いがあれば、その違いも置き換わりに影響している可能性がある。
本研究では、繁殖形質の詳細をそれぞれの種ごとに明らかにし、2種間でそれらの形質を比較した。また、繁殖形質の違いが逆転にどのように影響するのかを客観的に解析するために、得られた情報を基に個体群存続可能性分析を行った。
繁殖形質の調査では、モツゴはシナイモツゴに比べて相対的に小卵多産傾向にあり、シナイモツゴは反対に大卵少産傾向にあることが明らかになった。個体群存続可能性分析では、モツゴ個体群とシナイモツゴ個体群の絶滅確率の違いが2種の産卵回数の差に起因することが明らかになった。これらの特徴によって、モツゴとシナイモツゴの個体数の逆転が生じる可能性が示唆された。さらに、2種間の交雑と雑種の不稔が加わることでシナイモツゴからモツゴへと置き換わるのかもしれない。