| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA2-094 (Poster presentation)
山形県東村山郡の畑谷大沼のミジンコ(Daphnia dentifera)個体群では、季節によってその中に体色の白濁した個体が多数見られることがある。顕微鏡による観察とDNA塩基配列の解析の結果、これらの個体はマイクロスポリディア(Microsporidia)の1種に感染していることがわかった。マイクロスポリディアは昆虫、甲殻類、哺乳類などヒトを含む広範な生物の細胞内に寄生する単細胞真核生物の一群で、一般に病原性は弱く、極めて特殊化した菌類であると考えられている。
ミジンコを用いた先行研究では、このような寄生者は特定の遺伝子型のミジンコに選択的に寄生することが実験的に示されている。しかし、野外のミジンコ個体群において、マイクロスポリディアが特定の遺伝子型の個体に選択的に寄生しているかは明らかでない。
そこで本研究では、2009年から2011年までの3年間、畑谷大沼のミジンコ個体群を毎月採取し、マイクロスポリディアの感染が特定の遺伝子型の個体に対して起こっているかを形態観察と分子生物学的手法により調べた。
その結果、ミジンコ個体群のマイクロスポリディア感染率は0-93%と季節によって大きく変化し、水温や餌条件の他に、遺伝子型によっても異なることがわかった。発表では、どのような遺伝子型の個体がマイクロスポリディアの感染に対して脆弱であるかも含めて報告する。